第9回
親が所有する不動産を身内が売却することはできますか?
親が認知症を患ってしまい介護施設の費用をまかなうために、住んでいた家を売却したい、とか昔買った土地を売却したいといったことで「親が所有する不動産を身内が代理で売却することはできるのか?」という相談がとても増えています。急速に高齢化が進む中で、このような高齢者が所有する不動産の売却について社会問題化してきているようです。
親の実印と権利証さえ預かっていれば、代理でも簡単に売却が行えるとお考えの方も多いようですが、不動産売却において不可欠なのは「所有者本人の売却の意思」となります。確かに、所有者から委任状を受けた身内の方が、本人に代わり契約や決済に立会うというケースはありますが、その過程で我々不動産業者と司法書士が必ず本人の意思確認を行うことになっており、もしその確認ができなければ不動産売却は成立しません。
この手段として『成年後見人制度』というものがあります。家庭裁判所に申し立てることにより、自己判断能力が不十分な方の代理人を立てて、ご本人の財産の管理を行います。そのうえで不動産売却を行うのです。しかしこの制度の手続きには、かなりの時間と手間がかかり負担がとても大きいです。
今後はこのような理由による不動産の売却が増えてくることが予想されますので、そうならないように早めの対策をする必要があると思います。